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おしらせ

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平成28年 年頭のご挨拶 理事長・院長 宮本憲司朗

 年末年始はお天気も良く、暖かくいいお正月でした。昨年は病院としては大きな問題もなく無事に過ごすことができました。
 平成27年を振り返りますと、5月の医療機能評価受審がありました。第3回目の更新でした。今回の受審テーマは若い世代を中心とした、第3世代の八代更生病院としての変化の始まりでした。2025年へ向けての新しい始まりの年であったと思います。2025年は団塊の世代が全員75歳の後期高齢者となる年で、少子高齢化問題がピークになる年です。
 昨年の日精協の報告では、全国の精神科病院の平均病床利用率が90%を切ってきました。当院でも利用率が年々減少傾向にあります。これは長期在院患者の退院促進、入院期間の短縮化、地域医療へのシフト、高齢者入院患者の増加に伴う看取りの増加等が要因として挙げられます。
 病床利用率は今村理事長の時より病院運営の大きな柱の一つとして利用率アップにスタッフ全員で取り組んでいます。毎月第1火曜日は診療管理会議が開かれ、そこで病床利用率向上も重要な議題として毎月各部門から利用率の数字を報告してもらっています。昨年10月の診療会議で、平成27年度上半期の総入院費が前年度比で減少したことを提示させていただきまし。その後直ぐに職員の皆様に対応していただき、11月、12月は盛り返してきました。これは素晴らしいことだと思います。スタッフ皆様が日々行っている医療業務が病院運営と直結していることを十分に理解していただいているからこその理解と行動であったろうと、ありがたく思っています。
 政府は「社会保障と税の一体改革」で「経済再生なくして財政健全化なし」と医療・保健・福祉改革に市場原理主義を持ち込んでいます。市場原理主義とは利潤を得ることを最大の目的とした価値観であり、人は財産を有する人に何らかの商品やサービスを供給し、その対価として報酬を得ることによって自らの生活を豊かにする、というものです。
 日本の医療は国民皆保険制度によりいつでもどこでも平等に合理的な一律料金で受診できます。受診してこられた患者様には、どなたにも同等の医療サービスを提供します。精神医療では、社会的に、経済的に不利益を蒙りやすい患者様が多いので、精神科医師の倫理綱領では、「精神医学・医療は人びとの精神保健福祉の向上に寄与し、精神の病による障害や不利を克服し、平和で幸せな生活を送れるよう支えること」を目的としています。これは精神科医師ばかりでなく、すべての精神科医療従事者の目的でもあります。利潤を得ることを最大の目的でなく、高い倫理観と使命感を持って、「暖かさと癒しの医療」を提供し、病院運営に当たっています。
 少子高齢化のもう一つの問題である、若い医療スタッフ不足です。今年の4月には熊本市で開催される、ナースの就職ガイダンスにブースを開く予定です。これも既に、現スタッフを中心にプロジェクトチームが活動しているところです。若いスタッフに病院が求めるものは、精神科医療を多く経験し、そして学習し、精神科医療従事者として成長していただくことです。一人ひとりの力が伸びて、それをチーム医療で増幅させていき「看護の力」として治療効果に反映するものと考えます。新しい仲間が大勢増えれば良いと思います。
 今年も八代更生病院職員全員が、健康で、元気に働けることを祈念して年頭のご挨拶とさせていただきます。
参考文献
櫻木章司:精神科における医の倫理と市場原理は両立するのか?、精神科治療学、30(12);1561−1565、2015